。+:゚⋈根無草⋈:゚+。

28歳独身フリーター、竹ノ塚ツブ子。夢なし!目標なし!彼氏なし!実家暮らし!人生暇つぶし!

さよならビレバン

地元のヴィレッジヴァンガードが閉店すると知り、悲しみに暮れている。最近はめっきり行く回数が減ったし、いつかそう遠くないうちになくなるだろうとは思っていたけど、いざ現実になると残念でならない。でも、なんだかんだ10年以上存在していたのだ。そりゃ私も大人になるし、店員も変わるし、流行りも変わるわけだ。
ビレバンは2010年代にはそこらじゅうに店があり、サブカルに疎い人にはほぼ一緒に見えるようだが、店員が自分の担当のコーナーを持っているので、各店で品揃えが異なっている。商品に付けられた手書きポップも、コーナーを担当している人が書いているという。そのポップはどれも秀逸で、高校大学の頃はよくビレバン巡りをしていた。私はかなり浅はかなサブカル女だったし、漫画も本も大して読まずアニメもほとんど観ていない。でも青春時代がビレバンと共にあったことは忘れない。
高校受験が終わったその足で、解放感に任せてビレバンででかいバケツに入ったポップコーンを買った。そしてそのまま塾に向かったのだが、あのときのポップコーン、めちゃくちゃ美味しかった。高校の帰りによく立ち読みで廃墟写真集を眺めて、いつか軍艦島に行きたいなあと思っていた。私の廃墟好きはビレバンありきだ。 2009年、軍艦島写真集はすでに数冊あったけど、まだ世界遺産にはなっておらず、ツアーもなかった。上陸する術は、地元の漁師に頼み込んで船に乗せてもらうしかなかった。ここまでメジャーになるとは、時代が進んだものだ。廃墟写真集の立ち読み中に隣でずっと流れていた曲のCDも買った。高1から大学卒業までの7年間で、7000回以上再生した曲もいくつかある(iPodつけっぱなしで寝てたこともあってだが)。音楽にはかなり疎かったけど、ビレバンでCDを何枚か買って、エレクトロニカやジャジーヒップホップというジャンルを知った。
フェチ系写真集もビレバンで知った。高1のときに青山裕企さんのSCHOOL GIRL COMPLEXを手に取り衝撃を受けた。制服姿や体操服の女子高生ばかりを撮った写真集で、巻末に素人のモデルを募集していると書かれていたので、いつかやってみたいと思ったものだ。大学2年で実際に青山さんにコンタクトを取り、全裸顔出しOKでモデル登録した。
地元にビレバンがなかったら、それらに出会うこともなく、もしかしたら芸大に進まなかったかもしれない。自分にとってはかなり大きな存在だった。
いつだったか、耽美派文学とその周辺の書籍だけを集めたコーナーがあった。文学にも美術にも造詣の深いスタッフが、文学、漫画、画集と揃えたようだった。絶対に写真を撮ったはずだけど15000枚あるカメラロールから見つけられない。見つけたらここに貼ろうと思うけど、とにかくものすごいラインナップで、こんな田舎でもこの本棚を作れる人がいるんだと嬉しくなった。
時が流れて、サブカル文化が浸透した。髪の毛を青にするのも珍しいことじゃなくなったし、アニヲタであることを大っぴらにする人が増え、DAMでもボカロ曲が歌えるようになり、クレイジージャーニーはやらせが発覚して番組が打ち切りになり、ミスiDにはものすごい数の女の子が応募するようになり、軍艦島世界遺産になった。
あの耽美派の本棚を担当していた人は、もうとっくに店から離れてしまった。私は社会人になって仕事も忙しくて、本を読むこともなく、何か観たり読んだりしても特に何も感じることはなくなった。ビレバンに行ってもそんなに面白いと思わなくなった。時代が進んでサブカルが物珍しいものではなくなったのと、自分の感性が鈍くなったせいだろうと思った。でもある日、地元のビレバンで件の「SCHOOL GIRL COMPLEX」の写真集に「エロ本です。」という手書きポップが付けられていて、かなりショックを受けた。ポップをつけるということはそのコーナーを担当してるということのはずなのだけど、フェチ写真の精神性と本質を理解する気概すら感じられなかった。そして、もうこのビレバンも長くないだろうと思った。確か2019年のことだ。
遊べる本屋なのに、小説すらほとんど置かなくなった。思い出はたくさんあるし本当にお世話になったけど、行くたびに過去の残像ばかり探すようになっていた気がする。
時代は止められないし、それに準じて各々変化していかなくてはならない。だけど、思い出はなくならないから、ここから先は若かりし頃の記憶を大事にしていこうと思う。
地元のビレバンよ、さよなら。それから私の青春時代も、さよなら……。


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