。+:゚⋈根無草⋈:゚+。

28歳独身フリーター、竹ノ塚ツブ子。夢なし!目標なし!彼氏なし!実家暮らし!人生暇つぶし!

昨日バンジージャンプしてきた

退職まであと42日

 

昨日、念願のバンジージャンプをしてきた。

新宿から常陸太田市竜神大吊橋まで、レンタカーで向かった。竜神のバンジーは去年までは日本で一番高く、100mある。大学を卒業する頃、友達からバンジージャンプの話を聞いてから、いつかやってみたいと思っていた。

レンタカーはマブダチ(イケメン♀)が運転してくれた。アラサー女子2人旅である。9時に出発すれば14時前には現地に着く予定だった。まず電車が遅延して集合が遅れた。車の方は、首都高を脱する前にバッテリーが上がってしまった。PAにほんの10分ほど停車してエンジンも切っていたので、バッテリーがあがる心当たりは全くなかった。救援に来てもらうと、バッテリーが古くなっていたことが分かり、新品に交換。待ってる間は喫煙所で駄弁ったり、共通の知り合いと通話して時間を潰した。

ようやく出発できたのは13時過ぎ。バンジーの予約は15時だったので、とりあえず電話して16時の回にずらしてもらった。カーナビの到着時間は15時55分と表示していた。完全に諦めてしまえる時間でもなく、全力で向かうことにした。巻けば大丈夫そうだが、安全運転をしないと事故を起こす危険もあった。まあ、間に合わなかったら温泉でも入ってゆっくりしようという話をした。SAでランチする予定だったが、それはもう諦めることにした。

幸い渋滞にはまることもなく、安全運転の範囲で15:45到着まで巻くことができたのだが、SAでトイレに寄ったら到着時間予想が16:06になってしまった。なんとか滑り込みで受付してもらえないかと問い合わせたところ、日暮れが早いこともあり待つことはできない、16時ジャストで締め切りになると言われてしまった。とりあえず向かいますと言って電話を切る。

下道に出たら、平日の田舎道ということもありだいぶ巻くことができた。後ろからクラクションを鳴らして猛スピードで追い抜いていく車があったが、まあイバラギだし仕方ねえと言って笑った。その車は道の先で案の定警察にパクられていた。我々は安全運転の範囲で急いだ。

到着したのは結局15:58。ギリギリ間に合った。すっかり夕方で、日差しは地面まで届かず、急激に冷え込んできていた。標高が高いのでなおのこと寒い。

手早く受付を済ませる。命の保証はない、顔や体に怪我を負う可能性はあるけど訴えることはできない、などのことが長々と書かれた誓約書に、ざっと目を通してサインした。

他に男女4人のグループが来ていたが、1人小柄な女の子がいて、体重が足りず参加を断念しなくてはいけないようだった。

受付場でハーネスをつけて、橋に向かう。橋の下は湖で、周りは山に取り囲まれている。紅葉は終わりかけていたが、山はまだ茶色の中に赤や黄色を残していた。来年、紅葉の時期は混むらしい。

先に来ていた男女4人のグループの歩みが遅く、遠く後ろの方で、怖い、飛べないかもしれないと話しているのが聞こえてきた。

正直私は、自分で行きたいと言い出したわりにあまり実感が沸いてこなかったが、ジャンプ台の上ですくんでいる自分の姿を想像したら、なんだかそうなる気がしてきた。マブダチは全然緊張してなくて、後ろのグループを尻目に「秒で飛んでかましてやろうぜ」と言い出した。秒で飛んでる自分の姿を想像したら、なんだかそうなる気がしてきた。

ジャンプ台の待合室に着くと、さっき取り付けたハーネスの他に、両足にさらにプロテクターらしきものをつけられた。装着してもらってる間に、カタコトの日本語を話すスタッフから、飛び降りた後の作業について説明があった。バンジーの紐は足に付いているので、最後は逆さ吊りになる。体に付いている赤い紐を右に引っ張ると、足の紐の一部が外れて頭を上にすることができる。上から別のロープが降りてくるので、それを胸の金具につけ、合図を送ると上に引っ張り上げられる、という仕組みらしい。YouTuberのバンジー動画では、飛び降りた拍子にパニックになって、後の作業が完全に抜けてしまっていた。そうならないように、スマートに完了させたいと思った。

私の足にプロテクターをつけてくれるお姉さんが、やたら苦戦していて「ちょっと緩いけど……大丈夫か」と独り言を言っていたのでちょっと怖くなった。

順番は自動的に割り当てられた。他のグループの女の子が最初で、二番目が私、三番目がマブダチ、その後に他グループの男の子が2人続くことになった。ノリノリの音楽がかかり、先程のカタコトのスタッフが誘導してくれる。「3・2・1・バンジー」と声がかかったら思い切り前に飛ぶのだが、最初の女の子は足がすくんでなかなか飛び出せなかった。みんなから「大丈夫いけるよ」「飛んでも飛ばなくても17000円だよ」「頑張って」と励まされ、カタコトのスタッフにも「これで最後ネ」と言われ、思い切ってその子は飛び出した。私たちは上からその様子を伺った。人間が山に吸い込まれてどんどん小さくなっていく様子、面白い。待合室の足元は金網になっているので、一度バウンドして再度また落ちていくのを見ることができた。その子が昇ってくるのを見届ける前に、私は準備に入ることになった。

何枚か写真を撮られ、ロープをつけられる。ジャンプ台のへりにつま先だけ出して、右からは記念撮影を、左からはマブダチのスマホで写真を撮ってもらう。目の前は、上半分だけ日に照らされた赤茶色の山々。いけるな、と思った。一発でかませる。

「3・2・1・バンジー」の声と共に、何も考えずに身体を前に飛ばす。すぐに、経験したことのない速度感と、体の支えがないことへの不安感が襲ってきて、思わず目を閉じて叫んだが、一瞬で、これは大丈夫なやつだと冷静になり、目を開ける。自分の身体が今落ちていっているのか、弾みで上昇しているのかよく分からないが、湖が見えた。そのあとに無重力状態を感じ、赤茶色の山々が静止画に見えて、ようやく自分の状態を把握することができた。

上の方から、赤い紐を引っ張ってと声がしたので、待合室で説明があったように、赤い紐を右手で引っ張る。外れない。両手でなんとか掴んで引っ張ってみるも、何の感触もなく逆さ吊りのままだった。上からはまだ「引っ張って」と声がする。「外れません」と返す。赤い紐が左の靴に絡まっていた。「足を広げて」という声も聞こえてきたが、全くびくともしない。痛くはないというのが幸いだった。「足広がらないです」「無理です」と叫んだけど、上に私の声は届いていないようで、茶色い山に虚しく吸い込まれていく。逆さ吊りのまま、頭をなるべく上に向けて大声を出したり、足や腕に力を込めるのは不可能である。そもそも私は日頃運動不足、常に運動音痴、筋肉の付きにくい体型なのだ。「無理です」「助けて」という声も虚しく、バンジーの紐を大きく揺さぶられる。こちらは逆さ吊りだし、三半規管の弱い体質だ。何度か揺さぶられて上下左右にに身体が弾んだが、そのうち身体が回転し始めたので、もう赤い紐を引っ張ることは諦めて目を瞑って耐えることにした。こんなに心細いと感じたことは、大人になってから何度とない。早く誰か救助に来ないかなと思っていたら、ジャンプ台よりは近そうな距離から「お姉さん、今行くから待っててね」と声がした。どのくらいの距離まで来てもらえているのか、目を開けて顔を上げる体力もないので、大人しく逆さ吊りのまま脱力する。頭に血が上ってチカチカしていた。お姉さんが来てくれてからもずっと目を閉じて全てを任せた。ようやく頭を上にしてもらって、引っ張り上げてもらうことができた。ジャンプ台に着いたからも記念撮影があったが、多分相当青い顔をしていたと思う。まだ確認はしていない。

ジャンプ台に着くと、マブダチが他グループの子たちと打ち解けていた。コミュ力が高い。

マブダチもあっさりと一発で飛び、テキパキとジャンプ台に戻ってきた。その後の男の子2人も、多少怯みはしたものの無事に戻ってきていた。

最後の子が飛び終える頃には、すっかり暗くなってきていた。記念撮影の確認をして、受付に戻る。夏に来たら絶対爽快だよね、と他グループの子達が話していた。体重制限に引っかかった女の子が、夏までに3キロ太ると言っていた。

 

またレンタカーに乗り込み、今度は温泉を目指す。すっかり夜になった気でいたけれど、まだ17時半前だった。夏ならまだまだ明るい時間だ。近くの温泉で調べてカーナビに従って行ったら、街灯の一切ない山道を行くことになった。崖から落ちたら死ぬなとか、これはたまにほん怖で観るシーンだとか思いながら、車一台のスペースしかないので戻ることもできない。宿の駐車場に行けばUターンできるだろうと進んだ。温泉宿、一部しか電気が付いていない。やってる気配が一切ないが、駐車場に一台車があるから、誰かしらはいるんだろう。ネットで調べたら、じゃらんにもYahooトラベルにも載ってない、一日二組しか泊まることのできない秘湯、日帰り温泉もできる宿などと書かれていた。入り口のチャイムを押したら、奥からおじいさんがやってきて、コロナからこっち、日帰りの温泉はやっていないのだと言われてしまった。そりゃそうか。すっかり忘れてたけどコロナ禍だった。

気を取り直して、東京に向かいつつ別の温泉を探した。福祉施設の一部にあるという温泉にたどり着いた。福祉施設なので受付は綺麗な市民プールみたいな感じで、中は風情のある岩肌剥き出しの温泉ではなく、やはりスーパー銭湯の雰囲気だった。当然私たち以外はお年寄りしかいなかった。しかしお湯は温泉特有のぬめりがあり、天井や浴場の隅には白い結晶がついていた。

満足して駐車場でタバコを吸っていたら、星がたくさん見えた。視力が悪いので小さい星は見えてないが、都心よりもずっと多いのは分かった。流れ星がひとつ視界の端に見えた気がしたが、気のせいだったかも知れない。

帰り道、SAで晩御飯を食べた。ふらっと寄っただけなので、何が名物なのかよく分からなかったが、土産物コーナーを見る限り、梅と、メロンと、マロンと、干物と、納豆と、水戸黄門が有名らしかった。茨城名物の他に、宮城や福島のお土産も混ざっていた。常陸太田市はわりと福島寄りだったはずだ。日帰りで行けるもんなんだなあと思った。

帰りも特に渋滞にはまることなく東京まで行くことができた。夜景がとても綺麗だった。特にスカイツリー

首都高を降りてから、都心の複雑な道路表示に惑わされて、なかなかレンタカー屋に辿り着くことができず、新宿駅周辺を巡ることになった。まさか終電直前の時間帯に区役所前を通ることになると思わなかった。酔っ払いは飛び出してくるし、通行人は車のことなど見てすらいない。やっとレンタカー屋に着いたと思ったら閉まっていた。22時に返す予定ではいたのだが、予定が大幅に押してしまっていたし、22時閉店であることを知らなかった。明日の朝返却することになり、私は終電間近で明日も仕事なので、マブダチに家まで送ってもらうことになった。社会人というのはこういう時に次の日のことを考えなくてはならないので大変だ。前日3時間半しか寝てないし。それは私が悪いのだが。

0時半過ぎに家についた。本気を出せば日帰りで遠出できることが分かった。マブダチの運転のおかげである。本当にありがとう。5月以降にはなるけど、今度は富士急行こうねと話した。私もペーパードライバーを卒業しなくては。

 

いつかやってみたいことをひとつクリアした。もしまたバンジージャンプをすることがあったら、その時は少し足がすくむ気がする。やるなら今年新しくできた、日本一のバンジーをやりたい。200mあるらしい。

あと、筋トレしようと思った。あの紐は、筋力があったら引っ張れたのかもしれない。今日は全身筋肉痛である。